幸せの温度
「も……むり……お腹すいた……」
重い重いペンを、ペン立てに放り出す。もちろん、きちんとインクをぬぐってから。
でろーん、と机に溶け落ちると、すかさず頭に書類の束が降ってきた。というか振り下ろされた。結構な速度で。ぱしっと。見なくてもわかる、リーバー班長だ。
「ほら、さっさと仕上げろ」
「うえーんリーバーくんの鬼〜!」
「なんだ、室長のマネか?」
「似てました?」
嬉々として顔だけ上げると、そこにはリーバー班長の、深い深い眉間のシワ。――さすがにふざけすぎたかな。反省して体を起こすと、不意に手を取られた。そして、返ってきたのは予想外の言葉。
「……俺は上司なんかよりも、かわいい妻と早く昼メシ食いに行きたいんだけどな」
取られた右手が、大きな両手に包み込まれる。あたたかい指でむにむにと揉まれて、固まった掌がほぐれていく。その優しい温度に、考えるより先に言葉が出た。
「オムライス、ふわふわのやつ」
「やるべきことは?」
「資料作成」
「よろしい」
再び手に取ったペンは、まるでおとぎ話を紡ぐかのように軽やかだった。
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17.幸せの温度 ふわふわ/お腹すいた/おとぎ話
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