独占
そうして、無理に有給を使う必要もなくなった私だけれど、今日はリーバーさんと休みを合わせた。リーバーさんの自室は、たくさんの書類に埋もれていて、なんだか落ち着く。狭いベッドの、リーバーさんの隣に腰掛ける。
「信じてた」
「ありがとうございます」
リーバーさんの、おめでとうよりも何よりも、その言葉が嬉しい。私が惚れた「リーバー・ウェンハム」は、班長としての彼も含まれている。だから、部下として、これほど誇りに思うことはない。
「でもね、リーバーさん。私、欲張りになっちゃったんですよ」
だから私、リーバーさんからのハグを所望します。
そう言って両手を広げれば、リーバーさんは優しく私を包み込んでくれた。
ぬくぬくとした体温を堪能しながら、不意に思い出したことを口にする。
「そういえば、リーバーさん」
「ん?」
「ずるい方法って、何だったんですか」
「……あー……」
リーバーさんは、コホンとひとつ咳払いして、「落ち着いて聞けよ」と前置きした。
「ある制度があってな。その条件を満たせば、比較的簡単に正規雇用が認められるんだ」
「その条件って?」
「……家族であること」
えっ。
リーバーさんの顔を見ようとしたら、ぎゅっと腕に力を込められ、それは叶わなかった。
「それって、あの」
「そうだよ、俺は、お前にプロポーズするつもりだったんだよ!」
照れ気味のその言葉に、胸が熱くなる。
「早すぎ、ですよ」
「それくらい必死だったんだよ、俺は」
「ふふ。……うれしい、です」
「じゃあ、必死ついでに、これも受け取ってくれるか」
肩を掴まれ、体温が遠ざかる。と思ったら、あごを引き寄せられ――唇に、やわらかな感触。
「俺は存外、嫉妬深いらしくてな」
「はい」
「もう、お前を誰にも渡したくない」
「……喜んで?」
「お前なあ、それ本気で言ってるのか?」
ええっ、何でそこで呆れられなきゃいけないの。首を傾げると、リーバーさんは私の頭を撫でながら、私に目線を合わせた。
「俺は今ので、お前に、婚約を申し込んだつもりなんだが。受け取ってくれるのか」
その真剣な眼差しに、ああ、やっぱり私はこの人が好きだなあと改めて思う。
「……ふふっ」
「な、んだよ」
「答え、間違ってませんでしたよ」
もちろん、喜んで。
そう言って、私はリーバーさんの頬に唇を近づけた。