その後
そろそろ帰ってくるかな、と思った瞬間、ドアの開く音がした。
「リーヴィ、おかえり」
「……ああ」
うわ、お疲れだ。思わず立ち上がると、リーバーさんは腰を曲げて近づいてきた。そのまま、すっぽりと彼の腕の中に収まって、ぎゅうっと抱きしめる。とん、とん、と背中を優しく叩くと、リーバーさんは頬をすりすりしてきた。ザラザラしたヒゲがちょっぴり痛くて、そんな些細なところにも、私の胸はきゅーんとしてしまう。
リーバーさんは疲れが溜まりすぎると、たまにこうなる。他では見せない、私だけが知る、彼の無防備な姿。いつもは周りから頼られる側であるリーバーさんが、この時間だけは私を頼ってくれる。それが嬉しい。
「大丈夫? 今日はもう寝ちゃう?」
「んー」
くったりと私にもたれかかっていたリーバーさんが、もぞもぞと動きだして――私を抱き上げた。
「ひゃっ」
びっくりして呆然としていると、近くのソファに下ろされた。隣にリーバーさんが座って、再び、ゆるく抱きしめられる。耳元で名前を呼ばれて、こめかみに柔らかい感触と、ちゅっとかわいらしいリップ音。
「……愛して、くれるか?」
思いがけない言葉に、ぶわっと頬があつくなる。……この言葉って、こんなにも破壊力があったのか。知らなかった。なるほど、これは、困る。
ふわふわして、ぜんぜん頭が働かなくて。結局、私が導き出せた言葉はこれしかなかった。
「こ、これ以上?」